Day 4 補充問題全訳
ADHD(注意欠陥・他動性傷害)
43歳の体育教師カレン・ブルームガーデンは、ニュージャージーで育った子どもの頃は、とても大
変な子どもだった。「私は学校ではまったくうまくいきませんでした」と彼女は回想する。彼女の教師た
ちや両親は、彼女が面倒な行動を起こすのでいつも彼女を非難してばかりいた。「彼らは、私がお行儀の
悪い子ども、すなわち、騒がしく、粗暴で、何にでも気が行ってしまう落ちつきのない子どもだと単に
考えていたのです。」彼女は10歳のときに精神分析医に診察してもらった。「でも誰も診断を下すには
至りませんでした。」十代のとき、彼女は非合法の薬物を乱用し始めた。 運動好きのブルームガーデン
は何とか大学に入ったが、彼女は不正な方法で卒業証書を取得したことを認めている。「私は勉強に勉強
を重ねても、何ひとつ覚えられませんでした。私は本当にそれは自分が悪いせいだと思いました。」卒業
後、彼女は体を動かす仕事を立派にこなしたが、事務的な仕事はうまくいかなかった。そして4年前に、
ある医者が彼女の病気に名前を付けた。それがADHDである。「(1)それを知って、私は肩が軽くなる
ようでした」と、集中力を向上させるために2種類の薬を服用しているブルームガーデンは言う。「38
年間、私は自分が欠陥のある人間だと考えていました。今私は(2-1)これが自分だと思っていたラベルを、
(2-2)本当の自分を表すラベルに書きかえているところです。」
15年前、ADHDのことを聞いたことがある人はいなかった。今日ではそれはアメリカの子どもた
ちの最も一般的な行動障害で、幾千もの研究とシンポジウムのテーマとなり、かなりの論争になってい
る。ADHDの専門家は、この障害は350万人ものアメリカの子どもたち、すなわち、18歳未満人
口の5%もの子どもたちを、ひどく苦しめていると言っている。(3)この障害だと診断される男の子のほ
うが女の子の2倍から3倍はある。この障害はかつて広く「多動性障害」と呼ばれた症状にとって代わ
り、より広範囲の症状の集合である。
10年前、医者たちは子どもが成長するにつれてADHDの症状は消えてゆくだろうと考えていた。
現在では、この障害は成人にとって最も増えている病気診断の範疇の1つになっている。ADHDをも
つ子どもの三分の一から三分の二は(4)その症状を大人になっても持ち続けると、ユタ医科大学の成人A
DHD診療室の室長であり、精神科医であるポール・ウェンダーは言う。多くの大人は診断に対して、
「ついに自分の悩みの種に名前がついた。自分が悪かったのではない」という安堵の反応を示すのであ
る。
ADHDを治療する人々の多くは、(5)この問題が認知されることが人道にかなった前進であると考え
ている。すなわち、子どもたちが自分でも抑制できない行動を理由に我々がその子らを非難することは
なくなるだろうと考えているのである。しかしこの障害が必要以上の熱狂をもって受け入れられている
ことを心配する(6)専門家もいる。「多くの人が時流に乗っている」と、シカゴ大学特別ADHD診療室
の室長である精神分析医のマーク・ステインは不満を言っている。「親たちは健康の専門家たちにADH
Dの診断を出せと迫っている。」(7)ADHDが誘惑的であるのは、それが「許しのしるし」になるから
だと、リンカンのネブラスカ大学特殊教育学部助教授のロバート・レイドは言う。「この子の問題は、両
親が悪いのでも、教師が悪いのでも、また、この子が悪いのでもない。『この子はみんなをいらいらさせ
る』というよりも、『この子はADHDをもっている』と言った方がよい。」大人にとって、(8)ADHD
をもっているという診断は個人的もしくは職業上の失敗の言い訳を与えているのかもしれないと、ハー
ヴァード医療学校の精神分析医であるリチャード・ブロムフィールドは意見を述べている。「ある人々は、
『(9)生物学的悪魔が(10)そうさせている』と言いたがるのだ。」
問1 下線部(1)は、「(1)それを知って、私は肩が軽くなるようでした」つまり「ほっとした」ので、正
解は[エ]のrelieved。
問2 (2-1)の部分訳は「これが自分だと思っていた」、(2-2)は「本当の自分」「思いこんでいた昔の自
分」とは「手のつけられない暴れん坊」で、今分かったことは、「実はそれは病気のせいだった」という
わけで、解答例としては、(2-1) I was a bad person (2-2) I have ADHD
問3 単純な指示語の問題。繰り返し出てきているADHDが正解。
問4 これまたこの文章のメインテーマ。「症状」とは「ADHDの症状」正解はof ADHD。
問5 「その問題の認知」とは「ADHDが広く病気であると認知されたこと」。
問6 下線部(6)のある段落の冒頭に、Many of those wbo treat ADHDとある。下線部(6)のsomeはこ
の部分のmanyと対応している。「多くのADHDを治療する人々は肯定的」それに対して「幾人かは懐
疑的だ」という対比になっている。正解は、of those wbo treat ADHD
問7 「ADHDの誘惑」とは「子供の乱暴な行動を、すべてADHDであると診断したくなる誘惑」
または「子どもの行儀の悪さを何でもADHDのせいにしてしまいたくたること」。
問8 繰り返すが、本文のメインテーマはADHD。正解は「ADHDをもっているという診断」。
問9 繰り返すが、本文のメインテーマはADHD。その病気を「生物学的な悪魔」と比喩。正解はADHD
問10 この問題はかなり複雑。「生物学的な悪魔がわたしにそれをさせた」つまり「ADHDが私に乱
暴な行動をさせた」という意味。英語にするとfail personally or professionally
問11 ア、工、キ
ア・・カレン・ブルームガーデンは子どもの頃、行儀の悪い子だと考えられていたので教師や両親からいつ
も非難されていた。
[正]3-5行参照。
イ.カレン・ブルームガーデンは10歳のときに精神分析医に診察してもらった。彼女はADHDと診断さ
れ法律で認められた薬を与えられた。
[誤]5-6行「診察は受けたが、誰も診断を下すにはいたらず、彼女は法律で認められていない薬物を
乱用し始めた」ので誤り。
ウ.カレン・ブルームガーデンは大学卒業後、事務的な仕事と同様に体を動かす仕事を立派にこなした。
[誤]9-11行に「彼女は体を動かす仕事は立派にこなしたが事務的な仕事はうまくいかたかった」とあ
るので誤り。
工.カレン・・ブルームガーデンが40歳近くにたったとき、ついにADHDと診断され、集中力を高めるため
の薬を服用し始めた。
[正]11-13行参照。
オ.ADHDはアメリカの子どもたちの最も一般的な行動障害である。興味深いのは、女の子のほうがADHD
と診断されることが多いことである。
[誤]20-21行に「ADHDと診断される男の子は女の子の2倍から3倍である」とあるので誤り。
力.ADHDの症状は子どもが成長するにつれて消えてゆく。そのため、大人たちは自分の抱える問題をADHD
が原因であるとすることができない。
[誤]25-30行「大人の間にもADHDは増えている。ADHDをもつ子どもの3分の1から3分の2は大人に
なってもその症状をもちつづける」ため、自分の問題をADHDが原因であるとすることができるので誤り。
キ.ADHDが広く認知されるにつれて、親たちは彼らの子どもの問題をADHDと診断するように健康の専門
家たちに迫っている。なぜならADHDの診断は「許しのしるし」になるからである。
[正]36-41行参照。
ク.大人たちにとって、ADHDであるという診断は彼らが個人的に、あるいは仕事のうえで失敗をしたと
きの都合のいい言い訳にはなりえない。なぜなら彼らの失敗はADHDによってではなく能力の欠如によっ
てもたらされたものだからである。
[誤]43-45行で「大人にとってADHDをもっているという診断は失敗の言い訳になるかもしれない」と
リチャード・・ブロムフィールドが述べているので誤り。
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