ジャイアントキラーと呼ばれた2台
生りはちいさいが、1クラス上の
スポーツカーとも対等に、又はそれ以上
の熱い走りを見せ、ジャイアントキラー
と呼ばれたコンパクトカーの元祖。
柔よく剛を制すスピリットは乗る者を熱く
興奮させずにはいられない。
今回はそんな可愛くも手強い2台を
1/18の視点で検証してみた。
市民の足としてト人気の高いフィアット500をベースに
排気量をアップし、デュアルマフラー、2ポートヘッド、
ウエーバーDCOE など高性能なチューニングパーツを組
み込み数々のレースで記録を残したアバルト695SS 。
非力な市販車を毒のあるチューンドカーに仕立てる手法
はアバルトマジックと呼ばれ、4連メーター、バケットシー
トで武装されたインテリアはプライベーターを興奮させた。
クーパー と アバルトはベース
が大衆車である点、設計者の
コンパクトカーへの思いなど
共通点は多いのであるが、
ご存知の通りFF、RR と駆動
方式は正反対である。
1950年代後半から60年代
にかけてマイクロカーの多くは
小さいエンジン出力で最大限
のトラクションを得る為にRR
の駆動方式を採用していたが、
ミニはサイズの割りには高出
力のエンジンを横置きにフロント
レイアウトする事で悪路での
走破性、広い室内を確保する
よう設計されている。
両者の最大の武器であるハン
ドリングについて検証してみる。
ミニは前述のとおり低重心と
独自のラバーコーンサスによる
ゴーカートの様な操縦性にある。
スプリングの無いシンプルな
サスペンションであるが、バネ
下荷重を軽くでき、ミニの車体
と非常にマッチしていたと言え
るであろう。
又、ラバーコーンの中にオイル
などの液体を詰め、前後のサスをパイプで繋げるといった ハイドロラスティック式も一部のクーパーで採用されていた
らしいが、残念ながら今回のモデルに使われていたかは不明である。
続いてフィアットであるが、こちらはフロントに横置きタイプのリーフスプリング、リアにスイングアクスル式独立懸架を
採用している。
軽量で当時のRR式の車では多く採用された方式であるが、高速旋回時にタイヤが浮くジャッキアップ現象が起きや
すい欠点も有ったとされる。
アバルト695SS はエンジン出力をノーマルの18ps から38ps に上げ高速旋回の出来る車に仕立てたためトレッド
を広げ、オリジナルのスプリングでサスチューンを施した。
リアエンジンで軽量、現在のカートの様な操縦性でジムカーナ や ロードレースで勝てる車を作り出したのである。
今回は半世紀に亘り人気を博したコンパクトカーの元祖とも呼べる2台を検証してみたが、両車に共通する強さは
軽さと、そのボディーを加速させるのに必要にして充分なエンジンによるものである事がわかった。
ミニミニ大作戦(1969年)など、映画やアニメ に登場する車両も小動物の様な小気味よい走りを見せ、車ファンなら
ずとも魅了され、名前を覚えるに至った人は多いであろう。 ( 実は筆者もその内の1人である
)
近年、New ミニクーパー、New アバルト695 が登場したが、ジャイアントキラーと呼ばれた今回の2台が今尚その
影響を与えたであろう事は容易に想像できる。