ジャイアントキラーと呼ばれた2台

Morris Mini Cooper S & FIAT ABARTH 695SS
モーリス ミニ クーパー  
     & 
フィアット アバルト695

生りはちいさいが、1クラス上の
スポーツカーとも対等に、又はそれ以上
の熱い走りを見せ、ジャイアントキラー
と呼ばれたコンパクトカーの元祖。

柔よく剛を制すスピリットは乗る者を熱く
興奮させずにはいられない。

今回はそんな可愛くも手強い2台を
1/18の視点で検証してみた。

現在もモデルを変え生き続ける Mini はおよそ50年前にBMC の アレック・イシゴニス らの手によって若者でも      
買える車として設計され、その後友人で F1も手がける ジョン・クーパー により1962年、小型軽量でパワフル、      
驚異のハンドリングを備えたミニ・クーパーへと進化を遂げる。      
当初850ccのエンジンは最終的にはクーパーS の1275ccへと拡大され、1964年のモンテカルロラリーを皮切      
りに3回の総合優勝を勝ち取ったのである。      
今回用意した車両は1967年にアルトーネン組がドライブした優勝車であるが、ポルシェ911やランチア・フルビア      
と言ったなみいる強敵を押さえ勝利したリトルモンスターである。      

対するABARTH 695 SSであるが、同様にFIAT の ダンテ・ジアコーサ が設計した大衆車をレーシングマシンに      
仕上げたカルロ・アバルトの代表的な1台である。      
FIAT 500をベースに排気量を689ccに拡大し、ウエーバーキャブやハイカム等でチューニングされたこの車両は     
グループ2 ツーリングカーレースの700ccクラスにおいて最強の速さを誇った。                 
ミニ クーパー S    
全長 : 3055mm      車両重量 : 638kg    
全幅 : 1440mm        
全高 : 1346mm      
フィアット アバルト 695 SS      
全長 : 2970mm      車両重量 : 500kg      
全幅 : 1320mm          
全高 : 1325mm       
エンジン : 水冷直列4気筒 OHC 1275cc 
パワー  : 75ps / 5500rpm         
トランスミッション : 4段            
ブレーキ : F / ディスク   R / ドラム    
ミニ クーパーが当時のモンテカルロにおいて圧倒的な強    
さを見せた理由は主に二つの事があげられる。      
一つは徹底した低重心のボディーとモールトン設計のラバ   
ーコーン と呼ばれるゴム製バネがもたらすハンドリン性能   
がミッドシップスポーツカーをも凌ぐものであった事。    
二つ目にパワーウエイトレシオ 8.5kg という現在の高性    
能車に匹敵するハイパフォーマンスが挙げられる。      
ンジン : 空冷直列2気筒 OHV 689cc  
パワー  : 38ps / 5350rpm     
トランスミッション : 4段          
ブレーキ : ドラム              

市民の足としてト人気の高いフィアット500をベースに       
排気量をアップし、デュアルマフラー、2ポートヘッド、        
ウエーバーDCOE など高性能なチューニングパーツを組      
み込み数々のレースで記録を残したアバルト695SS 。       
非力な市販車を毒のあるチューンドカーに仕立てる手法      
はアバルトマジックと呼ばれ、4連メーター、バケットシー      
トで武装されたインテリアはプライベーターを興奮させた。      

クーパー と アバルトはベース  
が大衆車である点、設計者の   
コンパクトカーへの思いなど   
共通点は多いのであるが、    
ご存知の通りFF、RR と駆動   
方式は正反対である。       
1950年代後半から60年代   
にかけてマイクロカーの多くは  
小さいエンジン出力で最大限   
のトラクションを得る為にRR   
の駆動方式を採用していたが、  
ミニはサイズの割りには高出   
力のエンジンを横置きにフロント  
レイアウトする事で悪路での    
走破性、広い室内を確保する   
よう設計されている。         

両者の最大の武器であるハン   
ドリングについて検証してみる。  
ミニは前述のとおり低重心と    
独自のラバーコーンサスによる  
ゴーカートの様な操縦性にある。 
スプリングの無いシンプルな    
サスペンションであるが、バネ   
下荷重を軽くでき、ミニの車体   
と非常にマッチしていたと言え   
るであろう。    
又、ラバーコーンの中にオイル  
などの液体を詰め、前後のサスをパイプで繋げるといった ハイドロラスティック式も一部のクーパーで採用されていた    
らしいが、残念ながら今回のモデルに使われていたかは不明である。    

続いてフィアットであるが、こちらはフロントに横置きタイプのリーフスプリング、リアにスイングアクスル式独立懸架を     
採用している。
軽量で当時のRR式の車では多く採用された方式であるが、高速旋回時にタイヤが浮くジャッキアップ現象が起きや      
すい欠点も有ったとされる。     
アバルト695SS はエンジン出力をノーマルの18ps から38
ps に上げ高速旋回の出来る車に仕立てたためトレッド      
を広げ、オリジナルのスプリングでサスチューンを施した。     
リアエンジンで軽量、現在のカートの様な操縦性でジムカーナ や ロードレースで勝てる車を作り出したのである。       

今回は半世紀に亘り人気を博したコンパクトカーの元祖とも呼べる2台を検証してみたが、両車に共通する強さは       
軽さと、そのボディーを加速させるのに必要にして充分なエンジンによるものである事がわかった。     
ミニミニ大作戦(1969年)など、映画やアニメ に登場する車両も小動物の様な小気味よい走りを見せ、車ファンなら     
ずとも魅了され、名前を覚えるに至った人は多いであろう。  ( 実は筆者もその内の1人である )      

近年、New ミニクーパー、New アバルト695 が登場したが、ジャイアントキラーと呼ばれた今回の2台が今尚その      
影響を与えたであろう事は容易に想像できる。   

1/18 Morris Mini Cooper S   by  京商
1/18 FIAT ABARTH 695ss  by  YatMing   
Analog Cars