GMのグローバルカー構想を探って。
GMが全世界の市場に照準を当てたグローバルカー構想を打ち出
し、その戦略車種とした一群の小型車を世界中に浸透させ初めて
いる。いわゆるTカー戦略がそれだ。 われわれはこのGMのTカー
構想を知るべく、そしてその一環として生まれた日本のTカーたる、
いすゞ ・ジェミニのTカーブラザーズのなかにおける実力を知るべく、
いすゞ自動車の協力を得て1台のジェミニとともにデトロイトを皮切り
に、イギリスのブォクスホール、ドイツのオペルを訪ね歩いた。
小林彰太郎
ボクゾールシベット
GMのグローバルカー構想
世界の人に愛される車を作りたい。これがGMのグローバルカー誕生の
第一歩でした。GMはヨーロッパの人気車オペルカデットをベースとして
開発にとりかかりました。GMでは車のサイズ別にSカー、Tカーとアルファ
ベットで呼んでいますが、このグローバルカーはTカーサイズにあたります。
カーグラフィック編集部、 大川 悠さん、三重 宗久さんのお2人がアメリカを
始めヨーロッパ各地をジェミニで回り、その兄弟車たちと比較をしながら
4500kmの旅をレポートをされています。
※ 全、48ページの中の一部分をここで
紹介させて頂きました。
注釈はオリジナルを抜粋してあります。
それにしても、さほど高級車でもない
一車種を海外へ持ち出してレポートを
するとは発売当時のメーカーの力の入れ
よう、カーグラフィック編集部の注目度が
うかがわれます。
OSTENDE TO MAINZ
さっきからジェミニのスピードメーター盤面で、針は140km/h と150km/hの
間を指し続けている。 タコメーターの針は4500rpmと5000rpmの間で震え
ているが、水温系、油温計の針はぴったりと一点を指したまま動かず、ただ
フュ−エルゲージの針がごく暖慢にFからEへの旅を続けている。 (中略)
一番左車線を走っているとメルセデスやBMWに脅されるから、結局真中車線を
走っているのが一番楽なのであるが、それでも事実上速度無制限のアウトバーン
でおとなしく分際をわきまえて走っていても面白くない。 だから時折目一杯
スロットルを踏みつけて可能な限り左車線を邪魔してみる。 こんなとき面白い
のはカデットオーナーと張り合う事だ。 1.2S ですら 60HPで、公称マキシム
は142km/hに過ぎないが、それでも一旦スピードが高まればジェミニと互角に
走れるらしく、左側車線を懸命に頑張っているのもいる。 その後ろにジェミニが
迫っても、相手はこちらのことを多少カスタマイズした同類と思うから、メルセデス
やBMWの時のように素直には道を譲ろうとしない。 それでも散々渋ったあげく
道を明け渡し、ジェミニがトップレンジの最後の差を使って抜き去ると、あいての
ドライバーは不思議な顔をして見送るのである。 おそらくセダンボディーに
GT/Eエンジンを載せ、グリルをカスタマイズしたスペシャル・カデットに会ったと
でも思うのだろうか。