クリスタルレッド外伝

その他のヌマエビ情報

ヤマトヌマエビとミナミヌマエビ

●他種の海老の水槽内飼育について

インターネットニュースグループfj.rec.pets.aquaより

1996春のインターネットニュース、農林水産省、水産大学校増殖学科、水産動物学講座の浜野龍夫先生と吉川貴志さんの投稿を名古屋・井関がここにダイジェストしました。興味のあるかたは以下どうぞ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q:苔捕り(藻を食べ、水草に食害を与えない)という面で、
  本当に”ヤマトヌマエビ”が一番適しているのでしょうか?
Q:”ヤマトヌマエビ”の繁殖についての論文/文献は?
Q:”ミナミヌマエビ”や、”ビーシュリンプ”は、
  通常の淡水水槽内での繁殖が可能と聞いた事があります。
  これらの海老の繁殖についての、文献/研究等は?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Message-ID: hamanot-2903961641570001@c-center.fish-u.ac.jp

農林水産省/水産大学校増殖学科/水産動物学講座の浜野龍夫先生についている大学院生の吉川(きっかわ)貴志です。

 私は卒論時代から浜野先生のもとで,両側回遊性ヌマエビ類の研究をしてきました。そして,これまで不可能であった両側回遊性ヌマエビ類の幼生の種類を分ける方法を明らかにしました。現在は,これらの両側回遊性ヌマエビ類の浮遊幼生が,天然でどういう生態を持つのかを究明しているところです。

 まず,1)の「ヤマトヌマエビがコケ取りに最も適しているか?」ですが,ヤマトヌマエビ,ヌマエビ,ミゾレヌマエビ,トゲナシヌマエビ,ヒメヌマエビの中であれば,ヤマトヌマエビが最も有効であると思います。ヤマトヌマエビの行動を見ていると,ほとんど常にコケを掃き取る動作をしています。海に下らないミナミヌマエビや,ビーシュリンプ,同じ両側回遊性の他のヌマエビ類は,どれもヤマトヌマエビよりも行動活性が低いようです。また,浜野先生によると,ヌマエビ類は水草を喰うそうです。

 次に,2)の「ヤマトヌマエビの繁殖の論文」ですが(英文です),「Zoological Science」という学術雑誌の「第1巻,571-589ページ(1984年発行)」に「The complete larval development of Caridina japonica de Man (Decapoda,Caridea, Atyidae) reared in the laboratory」というタイトルの論文があります。著者は「Ken-Ichi Hayashi and Tatsuo Hamano」です。

 最後の,3)ですが,ミナミヌマエビの繁殖についての文献は,古いもので,「水産増殖」という学術雑誌の「8巻2号,85-94ページ」に「タエビの増殖」というタイトルのものがあります.著者は「水江一弘・岩本泰雄」です.また,一般的なもので「月刊アクアライフ4月号(1995)No.189」に記事が掲載されています。
 これにも載っていますが,ミナミヌマエビはほっておいても勝手に繁殖してしまいます.釣具店で「タエビ」などと称して釣り餌として流通しているのも,このように繁殖が容易な点でも納得できます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q:淡水の池等に繁殖しているテテナガエビについて。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Message-ID: hamanot-0804960046300001@c-center.fish-u.ac.jp

> いわゆる俗称、手長海老(みぞれ沼海老に細長い手の付いたスタイルの奴)
>あれは完全淡水で繁殖するのでしょうか?

注)テナガエビは苔取り役どころか、熱帯魚・水草水槽には百害一利と、その後判明。

水産大学校の吉川です。
日本の代表的なテナガエビ類には,両側回遊性のヒラテテナガエビとミナミテナガエビ,そして,いわゆる陸封型のテナガエビの3種がまず,挙げられます。このうち,陸封型のテナガエビには,河川静水域・湖沼に分布するグループ(塩分が無くても幼生は育つ)と,汽水域に分布するグループ(幼生の発育には塩分が不可欠)の2タイプがあります。淡水の池等に繁殖しているテナガエビはおそらくこの河川静水域・湖沼に分布するグループのテナガエビであると思います。ちなみに,この2グループは両方共に河川間の通し回遊はしません。河川静水域・湖沼に分布するグループと汽水域に分布するグループはともに,一生をそこで過ごすとされています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q:東北地方のヌマエビについて。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Message-ID: hamanot-1004960058230001@c-center.fish-u.ac.jp

> 仙台市近郊で採集したヌマエビ(Paratya compressa)と思われるエビを
> 淡水水槽で飼っている(というか放ったらかしですが)のですが、
> 勝手に増えて、何世代も経過しております。前述のアクアライフには
> 確か、ヌマエビ類というくくり方で、いずれも、汽水域で幼生が育つような
> 記述があったように思うので、あれ?っとおもったわけです。
> ヌマエビは淡水のみで生活環を完結できるとされて いるのでしょうか?

水産大学校の吉川です。
仙台市にはヌマエビ(Paratya compressa compressa)の分布はこれまで記載がありません。それはおそらく,ヌマエビの亜種であるヌカエビ(Paratya compressa imprevisa)であると思います。ヌマエビは北海道を除く日本全土のうち,中部,関東,奥羽地方の脊梁山地帯を除く全地域に分布し,これに対しヌカエビはそれら脊梁山地帯に分布し,太平洋側の低地帯・海岸地帯では両者が分布するところがあるそうです。私もこれまで目を通した文献から,このヌマエビの亜種であるヌカエビはいわゆる陸封型であると考えていたのですが,アクアライフにはヌカエビも両側回遊型であるという認識がされています。このヌカエビの幼生期に関する文献を検索してもなかなか見つからないので,現在,このアクアライフに執筆された東海大学の先生に個人的に質問をしてみました。回答はまだ来ていません。
 このように,このヌマエビとその亜種であるヌカエビは,現在,分類学的に混乱が起きており,ヌマエビには大卵少産タイプ(大きな卵を少なく産む)の大卵型(Large egg type)と小卵多産型(小さい卵を多く産む)の小卵型の2タイプがあり,ヌカエビには3つの地方グループ(日本海グループ,太平洋グループ,関東グループ)があるようです。もし,採集したエビがヌカエビであれば,淡水のみで生活史を終えると私は思います。ヌカエビでなくヌマエビであればそれは大卵型のヌマエビでしょう。これも同じく淡水のみで繁殖が可能であると考えています。ですが,採集地点から考えて,おそらくヌカエビ(太平洋グループ)でしょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q:ミゾレヌマエビについて。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Message-ID: hamanot-0804962223290001@c-center.fish-u.ac.jp

> 近所でヤマトの他にミゾレヌマエビって売ってるんですけど。
> こいつはなにもの?
> ヤマトに似てるけどこちらのほうが綺麗です。

水産大学校の吉川です。
 ミゾレヌマエビは,ヤマトヌマエビと同様,海と川を行き来する「両側回遊性」のヒメヌマエビ属のヌマエビ類です。天然での生態はヤマトヌマエビによく似ており,ヤマトヌマエビが河川の最上流部に棲んでいるのに対し,このミゾレヌマエビは中流域に棲んでいます。

注)ミゾレヌマエビは高温に弱く、水温28℃以上になると死んでしまうようです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q:ヤマトヌマエビは水槽中で繁殖する?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Message-ID: hamanot-2303960459310001@c-center.fish-u.ac.jp

浜野龍夫@農林水産省/水産大学校/増殖学科/水産動物学講座 です。
シャコ,エビ,カニなどの生態の研究をしています。

淡水のエビは私が得意としている分野で,初めて「ヤマトヌマエビ」の幼生を育てあげ,1984年に論文を出した本人です。また,天然における生態などについても研究成果を公表しており,現在も研究を継続していますが,一般に趣味としてこんなに飼っている人がいるとは知りませんでした(こんな日が来るのなら,ヤマトヌマエビのトップブリ−ダ−をやっていればよかった!そしたらもっとマシな生活ができたかもしれん…と,チョット後悔しています)。

 知っておかねばならない生態は2点あります。

1.ヤマトヌマエビのメスは脱皮した直後にオスと交尾し,その後すぐに抱卵する。通常,これら一連の行動は夜間に行われる。

2.ふ化した幼生は,海水濃度50%以上(半海水)の塩水中でなくては生育できない。また,底面や壁面に付着している餌を食べる。20℃約1カ月の間に9回脱皮して,体長5ミリほどの稚エビに変態する。

 また,室内で繁殖させるためのポイントは?

1.オスとメスを一緒の水槽内に入れておくことです。そうでないと未受精卵を産み,脱卵しやすくなります。また,オスの数はメスの3倍は必要でしょう。

2.抱卵後はできるだけ暗いところで抱卵メスだけを単独で飼育してやります。

3.20℃で飼育すると20〜30日でふ化します。ふ化した幼生はできるだけ早く海水濃度70%前後の飼育水に移してやって下さい。馴致せずに直接入れても構いません。

4.餌はほんの少量のテトラミン(粉末)に麦芽やヌカなどの穀類胚芽などをほんのわずか加え,粉末にして与えます。

 簡便にやるなら,海水濃度70%で底面に砂を敷き,緩やかに底面濾過をし,数日おいた水槽(付着珪藻が水槽壁面や底面に繁茂します)に,ふ化した幼生を収容します。状態がよければ,勝手に稚エビになります。

追伸その1 このことも知っておいて下さい。

 ヤマトヌマエビをはじめ,日本に分布する淡水エビ類の大部分は,実は塩分がなくては幼生が育ちません。海で稚エビになってから,夏〜秋の夜,川の岸辺をぞろぞろのぼりますが,その途中に汚れた部分があったり,ダムや堰があると,なかなか親のいる生息場へたどりつけません。ヤマトヌマエビも四万十川のテナガエビ(ヒラテテナガエビ)も,サツキマスやアユと同じように川と海を往来しているのです。近い将来,建設省の前でヘンなエビの変装をして抗議デモをしているグル−プを見かけたらどうぞ声をかけて下さい。それは間違いなく私どもです。

追伸その2

 ヤマトヌマエビは泥臭く食用としてはオススメできません。こいつで出汁をとった味噌汁は最悪でした。ヒラテテナガエビは美味です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q:ミゾレは水槽中での繁殖、どうなんでしょう?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Message-ID: hamanot-1305961204140001@c-center.fish-u.ac.jp

水産大学校の吉川です。
ミゾレヌマエビもヤマトヌマエビと同様に,幼生の成育に塩分を必要とする「両側回遊」種ですので,水槽内での繁殖は困難です.

 上記の件ですが,ヤマトヌマエビやミゾレヌマエビなど,いわゆる両側回遊性のヌマエビ類は,抱卵後,海水処理をしなくても淡水中で幼生が孵化します。天然でも,河川の上流域で幼生が孵化し,そのまま川の流れによって汽水域または海水域に下り,そこで塩分を得て,脱皮・成長します。ヤマトヌマエビの孵化した第1ゾエア(最初の幼生)は1〜3日中に海水(50〜75%[体積比])に浸さないと死んでしまいます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q:ビーシュリンプについて。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Message-ID: hamanot-2805961556240001@c-center.fish-u.ac.jp

 浜野龍夫@水産大学校ヤマトヌマエビ愛好会 ホンモノです。
 先般,某税関防疫所から中国大陸産という「びぃシュリンプ」という業界名の変な学名のついたエビの同定依頼が参りました。急いで調べましたところ,2種含まれており,どうもアフリカ(マダガスカル?)産のヌマエビ類(学名はあえて隠します)のようでした。どうもかなりの種類のヌマエビ類が単に「びぃシュリンプ」として国内に持ちこまれているようです。

※以上情報提供は、水産大学校/水産学研究科/水産大学校動物学講座・浜野龍夫先生と吉川貴志さんでした。

※ついでに、車エビ等、海の海老(観賞用ではありません。)に興味があるかたはこちらへどうぞ
http://www.inh.co.jp/~penaeusj/index.html
渡辺辰夫さん/浜名湖のほとりで車エビの養殖をされているかたです。※


MENU

衝撃クリスタルレッド] [鈴木さんとの出会い] [BeeShrimpの飼育法
クリスタルレッド個人通販情報] [飼育日記INDEX
私のおすすめ熱帯魚関係のWWW

・・・・・・・・・・・・このページは NEXTDesign 井関満 の制作です。 ・・・・・・・・・・・・